「桃の花…御坂町のすばらしさを全国のみなさんに伝えたい。こんないいとこないよ」

小河内さんと愛娘
ハーヴェストホーム
小河内英紀(御坂町)

桃の花アップ
農作業もする小河内さん

「桃の花のすばらしさを、御坂の景観のすばらしさを、全国のみなさんに伝えたい。こんないいところ、他にないよ。全国まわったわけじゃないけどね!?」

 小河内さんは、話をこう切りだした。冬の間は、ホームページ作りを仕事にする…ちょっと変った『本格的ネットファーマー』だ。

 実は、小河内さん、農業を初めて10年。以前は、販売会社で営業をやっていた。

「両親と一緒に、ときには、ご近所の方々にお手伝いいただき、約1町3反(1.3ヘクタール)の畑を、何とかやっています。春感ライブの拡充をはじめ、他にも色々とやりたいことはあるんだけど、そこの辺は一人なんで少しずつね…。5年間やって、ようやく少しはカタチになってきたかなって、そんなとこなんです」

桃源郷
フレームにおさまりきらない桃源郷

桃の開花実況中継!『みさか・春感・ライブ』
桃源郷2001.4.6
2001.4.6
桃源郷2001.4.16
2001.4.16
桃源郷2001.4.13
2001.4.13
桃源郷2001.4.13
2001.4.13
お気に入りの枝
コメント例:毎回毎回、通い続けると個人的に気に入ってくる枝がありまして、その一つが左の写真です。別にそれ程こだわっているのではないのですが、何となくカメラを向けると撮りたくなってしまう。そんな感じの枝で、はたして美味しい実をつけるかどうかはわかりませんが、何となくがんばれよ!って言いたくなります。
 「毎年、2月も最後の方になってくるとわくわくするんです。『今年も楽しみにしています』なんて、メールも入りだしてね。チョットめんどうだなと思う反面、今年もやってやるぞという気持ちで、気持ちが高ぶるねぇ。人力『春感・ライブ』、6年目突入!って感じかな」

 毎年恒例になった『みさか・春感・ライブ』とは、桃の開花状況を、インターネットを使って全国に実況する、小河内さん(農業)のホームページ・ハーヴェストホームの人気企画だ。なんと、1週間で5千人を超す人が訪れる。

「4月の初旬。甲府盆地を見下ろすと、それこそ、ずっ〜とピンクの桃畑が広がって、遠くには、残雪の南アルプス。桃源郷という言葉があるけど、ホントこの風景のことを言ってるんだろうなぁと、毎年ながらそう思う」

 御坂町は、甲府盆地の東南に位置する坂の町。甲府盆地と富士山、河口湖の間の峠・御坂山塊の甲府よりの町と言った方が分かりやすいかもしれない。標高300mから700mまで桃畑がつづき、桃の開花時期は、下と上とでは約2週間ほど違う。

 そこで小河内さんは、だいたい標高100mごとに定点観測をすることにした。早朝、昼休み、時には農作業の合間に、町内を軽トラで駆けめぐる。デジカメで写真を撮り、出来る限り時間を空けず、ホームページを更新する。

「撮影の作業以上に、写真に添えるコメントを書く方がたいへん! でも、これをしないと…みんなと感動を分かち合えないような気がするんだよね。ずっと映像を流しっぱなしにしているライブカメラって、なんか素っ気ないですもん」

 これこそ、人力ライブの命綱。花の色・香り、木のかたち、鳥の鳴き声、草の種が殻からはじけでる音…。畑での少ない情報をどう伝えるか? まさに小河内さんの腕の見せ所だ。そんな『春感・ライブ』を楽しみにしている方からの励ましのメールも多く、今では、小河内さんの心のよりどころになっている。

「東京の女性から来たメールはうれしかったねぇ! 彼女の彼は、修行中の和菓子職人。4年前のことだけど、二人で訪れた桃源郷の風景に感動してね、『桃の菓子を作ることができたら、独立し、結婚しよう』と告白されたんだって。去年、桃の菓子もできて…、今年は…、花の咲くころ…、結婚の報告に来てくれる…。うれしくて、泣けちゃうよね」

 このごろは、サイトを運営していくことが一つの『使命感』にもなっていると、パソコンに向かう小河内さんは、細い目をいっそう細めて笑う


地域でのおもてなしへ
ずらっと並ぶ桃のはなの画像
ずらっと並ぶ桃の花の画像
ホームページ『春感・ライブ』トップ
ホームページ『春感・ライブ』
フルーツ部会のホームページ研修
フルーツ部会のホームページ研修
小河内講師
小河内講師
 大好評な『春感・ライブ』。通常は、2日に1回の割合で更新する。しかし、昨年はちょっと大変だった。

「暖かかったんで、朝と夕方では開花状況が違ってきちゃって。人力でも、一応ライブですからね。変化があれば、その都度更新したいんです。結果的に、毎日更新してしまいました。それはなんとかなったんですが、ただ、一人ではこれ以上のことができなくて…。ネットでの交流が増えてくると、今度は実際に交流をしてみたいんです」

 そんなことを思っていたところ、町の観光協会・フルーツ部会(観光農園58軒で組織)から、ホームページを立ち上げたいという相談が、小河内さんに入る。待っていましたとばかり、ホームページ作りをきっかけに、小河内さんは夢をみんなに語りはじめる。

「近所の仲間うちでは、『この季節、花を生かして何かしたいじゃんね』と話はしていたんです。でも、自分たちは普通の農家だから、駐車場もないし、トイレもないし。でもホームページで、花見にうちの桃畑をお貸ししますよって言ったら、何組かのお客さんが来て、それはもう目を輝かせ、ものすごく幸せなひとときを過ごせたって、みんな、感激してね…」

 ちょこっと歩いて、あぜ道に入る。桃の花畑の中に入る。花びらが舞う。遠景は、桃の花のじゅうたんと南アルプス。こんな感動的なコースが、観光農園と農家が協力することで現実のものとなる。

「そんな取り組みを、いま進めてるんです。役場も協力してくれてね。何回か打ち合わせをしたら、農家の方で、うちの桃畑に入ってもいいよって言う人が、何人か出てきたんです。もう一息!」

 今年は、少しかたちになりそうだと、小河内さんは感じている。


「ぜひ働きに来たい」「ぜひ住みたい」という声
 そんな小河内さんが、インターネットのホームページを立ち上げたのは、1996年10月。

「最初は、プロに頼んで作ってもらおうとしていたんだけど、なかなか出来あがってこなくてね。『おぃおぃ、そんなんじゃ、果物の時期が終わっちゃうよ』って言ったんだけど、結局、間に合わなかった。そんなんだったら、自分で作るしかないって…」

沖縄のお客さま
「桃ってこんなふうに生っているんだ」
沖縄のお客さま。
桃園1
桃園2
桃源郷
無精ひげの小河内さん
インタビューを受ける小河内さん
 これが、結果的にお客さまとの直接対話に役立つことになる。単なる販売のページではなく、お客さまとのコミュニケーションのページとして、お客さまの要望に応えられるようになったからだ。

「販売のためのページなんですけど、あまり売ろうとすると、お客さまは離れていく気がしますね。どちらかというと、関係づくりに気を配った方が、好結果につながっています」

 あるとき、ネットで注文してくれている神戸のケーキ屋さんから、職人さんら3人が、小河内さんの畑に遊びに来た。

「その中の一人がね、うちで働きたいって言うんです。それも、女性ですよ。収穫の時、1週間でも2週間でもお手伝いしたいんですって。自分が使っている食材に、もっと関わりたいということなんでしょうね。我々が作っている製品って、そんなに人を集める力があるのかって…」

 農山村の過疎や雇用確保とか、さまざまな問題の答えは、意外に都会にあるのかもしれない。そう小河内さんは驚く。

「『春感・ライブ』をとおして、『御坂の桃の花を見に行きたい』といった問い合せが、年々増えています。これはなんとかなるのかなって思い始めています」

 そんな農業の可能性を信じ、この人たちとの関係を深めていくこと。そんなおもてなしのメニューづくり。これが小河内さんにとって、次の課題になった。

「個人的な夢として、桃の花の中でする結婚式も企画してみたいね。いろいろ問題があるけど、一組でもいいからやってみたい…。南アルプスを望み、花鳥山の桃の花に囲まれたウェディング。桃源郷で結ばれたカップル誕生!なんてね。こんなふうに御坂の農業が、都会と田舎を結ぶことができればいいなぁ…」

「それから、『春感ライブ』を『旬感ライブ』にして、一年を通し、御坂の風土をみなさんと共有していきたい。桃の季節だけの御坂ファンから、もうホントに御坂ファンってくらいに、なってくれるとうれしいね」

 『よくお問い合せをいただきますが、(私は)ただの百姓です』。『春感・ライブ』ホームページ画面の下には、こんな説明書きがある。そんなただの百姓の小河内さん。自分の夢は『御坂ファンづくりなのかもしれない』と、無精ひげをなでながらインタビューを締めくくった。


http://www.harvesthome.net/ ハーヴェストホーム
http://www.misaka.net/f-para/ 桃狩りへ行こう!フルパラ
御坂町観光協会フルーツ部会ホームページ 3月末公開予定

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