「うちは観光園と思っていません。これは農業の新たなスタイルなんです」
モモ狩りに喜ぶ三つ子姉妹
県内には観光ブドウ園をはじめとして多くの観光果実園がある。そんな果実園の資質向上を目的に観光果実園振興協議会が設立され、会員は280園を超す。協議会の元会長の堀内さんに、山梨の農業が向かう一つの方向として、自ら歩んできた道を振り返ってもらった。 |
金桜園(一宮町)堀内 圓
苦悩の10年 | ||||
「実は、この形態で何とか農園をやっていけると思ったのはここ4、5年なんです。16年前に普通の農業からいわゆる観光農園への展開を決意して以来、最初の10年間は試行錯誤の連続でした。えらいこと(大変なこと)始めちゃったなというのが実感でした」
「でも…最初は、お客さんと接することが恐かったなぁ。びくびくしながら、お客さんと話したのをまだ覚えています。単なる農家の親父でしたから、頭では分かっていても分かりやすい言葉でお客さんに説明し、理解してもらうにはとても大変でした…」
おしぼりや湯茶の接待、モモやブドウの無料試食などのサービス。花見の時の農園開放や甘酒の無料提供。数年前に始めたモモジャムやブドウジャムづくり、銘菓「月の雫」づくりの体験コース。これらは、なんとかお客様との会話を弾ませようという視点から生まれたメニューなのだ。 | ||||
バリアフリーの農園 | ||||
堀内さんの農園には、10年以上前から車椅子の方々も訪れている。特に秋の平日には、多くの障害者の方がブドウ狩りを楽しんでいる姿を見ることができる。車椅子や子供でも穫れるブドウ棚の高さ、フラットな地面。そして何より大切なのが、車椅子用トイレだと堀内さんは言う。
また、堀内さんは、9年ほど前からいち早くモモ狩りも始めている。
お店で売っているモモよりいいモモを穫って、持ち帰ってもらう。得した気分になる。また、子供たちには自分で収穫したという満足感が生まれる。そして何より重要なのは、金桜園の方々との笑顔での会話がモモ狩りの記憶に花を添えることだ。 「会話を楽しむ。一緒にモモを見ながら歩きましょう。そうお客さまに言っているんです。ただ『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』ではだめなんです。最近のお客さまは感動を求めていらっしゃっているんですね。そこで、私たちは、モモやブドウの目に見えない逸話なんかを話しながら収穫のお手伝いをするんです」
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「ここまで来て良かった」というお客さまの声 | ||||
「うちは従来の観光園とは思っていません。これは農業の新たなスタイルなんです。来ていただいたお客さまに納得していただいて、直接取り引きしてもらっているんです。ですから、お客さまの『ここまで来てよかった』という声がなければ、続けることができなかったと思います」
「いいものは高くても買いたいというお客さまが増えているんです。お客さまと直に接することで、やっぱり品質が一番だな。そのことを感じましたので、私たちも、もっといいモモを作ろうと毎年試行錯誤を続けているんです」 「中には、山梨には海がないからと言って、地元で獲れた海の魚まで送ってくれる人がいるんです。そんなときには商売を抜きにしてこちらが感動してしまいます」 お問い合せ先:金桜園 TEL 0553-47-1745 |