「お客さまのための情報発信だと思っていたら、実は自分たちのレベルアップにつながった」

1周年反省会
八ヶ岳ネットワーク
代表 清水稔三(右端)

メールマガジンの発行
 八ヶ岳の季節感あふれるトピックスを配信する、メルマガ『八ヶ岳通信』。
 1998年10月に第1号を発行してから、2年半が経過した。約40号を発行したわけだが、第1号の創刊当時を、清水さんはこう振り返える。

「それまで、ホームページなどでお客さまに八ヶ岳の素晴らしさをお知らせしていたわけですが、一人だと、やればやるほど限界を感じていたんです。やりきれないなって。情報を集めるのも発信するのも。それで、前々から注目していたメールマガジンを、仲間と発行していこうと思って皆さんに声をかけたんです」

八ヶ岳通信サンプルはこちら メンバーの方も、それぞれ自分でホームページを作り、情報発信していた方々だったので、この清水さんの提案に快く乗った。特に、インターネットの活用方法として、メールマガジンの定期的な発行は、それぞれのメンバーが何となく考えていたことでもあった。

 1998年10月。こんな経緯で、長坂、小淵沢の5人のペンションオーナーによる八ヶ岳ネットワークが誕生する。そして、年が変わって1999年からは、野辺山、富士見のペンションオーナーが参加し、7人で活動を進めることになる。

「ホームページ(やつねっと)の方はともかく、メルマガは自信がなかったんで、発行を「不定期」としていました。でも、メンバーやサポーターの方々のおかげで、1年を通して、月刊で発行できました。その後はイベントの部分を切り離し、月2回の発行を続けてきています」


サポーター「陸援隊」と共同開催した『田植えツアー』

 サポーターとは、地域で交流活動を進めている方々。時には、スキー場のリフト券をプレゼント用として提供もしてくれる。この方々が、普段から『八ヶ岳通信』を、情報発信のメディアとして認識してくれて、イベント情報などを定期的に送ってくれるようになった。

 清水さんは、そんな地域の協力体制がメルマガ定期発行を支えてくれたと感じている。1998年10月のメルマガ第1号の読者数は170人。季節感あふれる情報を定期的に発行することによって、1年後の10月号の読者数は、約1,000人にまで増えた。現在は、掲示板などを通して確実にファンが増え、読者は約2,000人になっている。

「メルマガを継続発行できたことも、このような方々がいたからだと思います。自分たちペンションだけの情報を出していたのなら、続いていなかったかも知れませんね。」
一周年反省会・企画会議(1999.10月)
清水
  
 1年間、月刊で出すことが出来たんですが、メールマガジンがきっかけで予約したお客さまは、皆さんのところにはいますか? うちには、正月にスキーリフト券をプレゼントしたお客さまが来ましたが…。

清水さんと田島さん(右)
田島
 
 こちらからそういうことは聞いていないんですが、向こうから「メルマガを見て来たんです」と言ってきたお客さまが2組いました。もうちょっと積極的にこちらから聞けば、もっと多いと思うんですが…。
 それより、実際は来ないんですけど、メールマガジンを見て、時々「ありがとう」というメールをお送りいただくお客さまがいるのが、とってもうれしいですね。
市川  そうですね。私もやっぱり確証はないんですけど、リピーターさんで読んでくれている人がいるんです。「楽しみにしています」とかメールお蔵づけを送ってくれたり、中には、自分のホームページに『やつねっと』をリンクしてくれている人までいますね。
 また、長坂駅前のお店で売っている『お蔵づけ』(写真右)を、メルマガを見て買いに来たお客さまがいたということも、やっててよかったなと思ったことの一つです。
 地域を紹介することで、結果的に地域産業の発展につながり、しいては自分たちのところにも来ていただけるという、いいサイクルが見え始めた気がします。
多賀  私も同じで、数字的には分からないんですが、感覚的に、楽しんで頂いているなという気がします。このメルマガがきっかけで、古い友人とのメール通信も再開することが出来ました。
 また、なかなかお客さまにお礼の手紙も書けないんですが、このメルマガがその代わりになっている気もします。これは、情報提供という以上に、お客さまとの関係性を深めていくツールかもしれませんね。
 今後は、どんな記事に興味があるか、読者に聞きながら情報を伝えていきたいと考えています。

市川さんと多賀さん(右)
田畑
   
 私も皆さんと同じで、メルマガがきっかけで予約を入れてくれたお客さんの数は分かりません。でも、ホームページを見てくれてお泊まりいただくお客さまが、最近だいぶ増えてきておりますので、メルマガも大切な情報手段だと思います。
 ただ、それ以上に、私が八ヶ岳ネットワークに参加して良かったなと思うのは、『自分自身の情報が豊かになった』『レベルアップになった』ということです。
 ペンション経営者として、地域にどんな交流の資源があるかっていうのを知っておいて、お客さまに伝える役目があります。最近では、お客さまは一通りの情報を持っていらっしゃいますので、従来の情報だけで対応しきれないようになってきています。皆さんと一緒に、新しい情報を得るシステムが出来たことは、とっても良かったと思います。
荒井  そうですね、ペンションのオーナーは何でも知ってると思っているお客さまは多いですね。いつどこの紅葉がきれいかというようなリアルタイムの情報も、わたしたち足を使って調べているのでお教えできるようになっています。でも、最近では、富士山の情報を聞かれるお客さままでいて、ちょっと困るのですが…。
 それにしても、メルマガからホームページを見ているお客さまも、結構いるような気がしていますね。

田畑さん(左)、平松さん(中央)、荒井さん(右)
平松  昨日までは、皆さんと同じようにメルマガのお客さんは特定できていなかったんですが、昨日、『メルマガを見て懐かしい名前があったんで、今回来たい』という予約が、だいぶごぶさたしていたお客さまから入りました。
 他にも、インターネットで予約を入れって頂くお客さまも増えていますし、メルマガも充実していきたいと思っています。
 また、1年を通じて感じたことですが、『集積は力なり』ということです。7人がそれぞれ協力し合ってデータを集めたからこそ、ここまで来れたのだと感じています。今後は、ボランティアでやっている自分たちにメリットのあるようなイベントをやっていきたいと思います。

 さらに、反省会では、多賀さんから「メルマガの最後に、7人の紹介がされているが、もういらないんじゃないの」という発言まで飛び出した。これを7人全員で同意し、『八ヶ岳通信』は、地域に根ざす情報マガジンとして、地域イベント部分を充実し、2年目のスタートを切るこことなった。
2年目からの展開
 八ヶ岳ネットワークの活動は、基本的にホームページとメールマガジンによる情報提供だ。その情報提供をするための地域情報の収集が、『地域ネットワークの拡大』と『ペンションオーナー自身のレベルアップ』という思わぬ副産物を生み出した。
 このような成果は、清水さんたちが、まず自発的に動くことで得られたもの。一つの波紋が周りにつながり、少しずつ大きくなってきた。そんなつながりの中で、清水さんたちは、また自らの活動の位置を確認できたのだといえる。

「2年目に突入したときに、より一層、地域のサポーターの方々との連絡を密にして、よりきめ細かい情報を発信していこうとみんなで話し合いました」 

やつ大スキー その第一弾が、冬の八ヶ岳の魅力をスキーを中心に伝える『やつ大スキー』のホームページの開設だ。
 単にスキー情報にとどまらず、冬こその場所、温泉、冬にやっているお店など地域情報を提供していく計画で、これに合わせ、メールマガジンの方も冬バージョンとしてスキー場周辺の穴場を紹介してきた。

「それに、もう一つは、ホームページに『掲示板』〜やつねっとカフェ〜を作り、メルマガの読者やホームページのビジターが相互に交流できる場、我々に対する意見、アドバイスなど自由に交流できる場を作ったことです」



 いやだったら行かないというのが、通常のパターンだが、意見を言ってくれるということは、そこが良ければまた行きたいということの裏返し。掲示板にそんなことが書かれたらどのような対応をしたらいいか?

「そう、最初はこんな風に固く考えていましたが、やり始めると以外や以外、こちらがオープンにざっくばらんにしていると、皆さんやさしく入ってきてくれて、自然にやつねっとカフェのテイストとかが出てきました」

 清水さんは自然にと話すが、決してサボらないお客さまへの親切な対応、そしてメンバーのフォローが、日本トップクラスの掲示板をここまで育ててきたといえる。1年半で2500の書き込み、これに対してメンバーが常に2、3の返事をしてきた努力がホームページを遙かに上回る12万アクセスに反映されている。
清水さん
「そんな掲示板のオフ会も昨年からやっていて、小海線に貸し切り列車を走らせているんです。JRの人とか、町の人とかみんな協力してくれて……。とってもいい感じになってきました」

 『受け入れる気持ち・開かれる産業』は、一度訪れてくださった方を、リピーターにし、ファンにしていく交流をしていこうというビジターズ・インダストリーのキーワード。清水さんは、掲示板を作ることで、お客さまを受け入れ、自らを開いていくことを決意したと言ってもいいかもしれない。ビジターズ・インダストリーへの展開が、ここ「八ヶ岳ネットワーク」にも見ることができた。

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